演劇

【舞台】鈴井貴之プロジェクト OOPERTS vol.2 "SIP IN A BOTTLE" の秘密【子虎だもの】

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2014年2月、東京グローブ座で行われた舞台「SIP IN A BOTTLE」を観劇しました。

わたしはどうでしょう藩士で子虎ですから、目的はミスターこと鈴井貴之さんと、この舞台出演のために北海道の劇団イナダ組で武者修行をしたという藤やんこと藤村忠寿さんでした。

南太平洋上に浮かぶ一艘のマグロ漁船。それは海上刑務所だった。脱走する事は不可能。刑期を終え陸に帰る日まで、黙々とマグロ漁に従事する受刑者たち。しかし大嵐により船は大破し沈没寸前。混乱する船内。生き延びる為には協力し合わなければならない。受刑者たちは懐疑心が先に立ち協調を見いだせず、混乱は増すばかり。それでも彼らは必死に生きようとする。だが、この船には彼らも知らない重大な秘密が隠されていた。

この舞台を観た直後のTwitter上の感想としては「難しい」「考えさせられた」「ここで終り?」「(前作の『樹海』より)笑いが多かった」「どうでしょうを見ていないので元ネタがわからない」「舞台装置が危険でハラハラした」「HTBの藤やんがベテラン俳優みたいに上手だった」「ミスターの存在感がハンパない」「めちゃくちゃ面白かった!」などなど、なかなかの問題作でした。

これからわたしが書く解釈はあくまで個人の感想であり、このような解釈をした人もいるんだな程度に読んでいただきたいです。

舞台一面に敷き詰められた十台以上のシーソー。ここは日本の刑務所が満員になったため、マグロ漁船に設えた海上刑務所であった。大しけで海が荒れ、船がゆれるとギシギシとシーソーが傾き、受刑者たち(大内厚雄、三津谷亮、諏訪雅、石田剛太、納谷真大)は甲板を転げまわり、船酔いに苦しめられ、一人、また一人と嵐の海に落ちてゆく。それでも日本に戻るため、マグロ漁を続けていたが、次第にそれぞれの過去が明らかになる。実は彼らには軽い気持ちで、ある夜のデモ行進に参加したという共通点があった。たまたまデモの途中でケガをして倒れていたビン(鈴井貴之)という外国人を助けようとしていたところ、デモ隊を排除していた警察官に取り押さえられ、下着泥棒やコンビニの募金泥棒、公文書偽造、わいせつ物陳列罪などの微罪でこのマグロ船に送られ、そのまま南太平洋の藻屑と散る運命にあったのだ。そしてこのとき助けたビンは、なぜかマグロ漁船の機関士として雇われ、5人と再会したのであった。過酷な労働と精神的に極限状態に陥った受刑者たちの間には、互いに疑心暗鬼の心が芽生える。そんなとき、真っ先に海に落ちたはずの船長(藤村忠寿)が、ビンの投げた救命ボートによって助かっていた。しかし、船底にあった有毒な産業廃棄物のため、船長とビンの体は汚染されてしまい、もう命は長くないだろうという。そう、海上刑務所というのは名ばかりだった。日本国は最初から受刑者たちを戻す気などなかった。処分に困った危険な産業廃棄物とともに罪人もろとも南太平洋に遺棄することが目的で、マグロ漁船に乗せたのだった。受刑者たちと船長は、それでも日本へ戻るんだ、とボロボロになったマグロ漁船に帆を高々と掲げ、遠く陸地を目指す。ひとりビンだけがすべてを悟ってしまったかのようにマザーグースの「10人のインディアン」を歌うのであった。

物語の中の「重大な秘密」とは、「産業廃棄物とともに受刑者を海に遺棄する目的のためのマグロ漁船だった」ということでよさそうです。ですが、もうひとつ外側にも「重大な秘密」が隠されている、とわたしは思うのです。登場人物たちは船の中にいるんだから外は海、でもさらにもうひとつ、その船は瓶の中に入っている。しかし瓶は透明なので見えないが登場人物たちは瓶の中にいる。つまりこの登場人物たちはマグロ船に囚われ、見えない瓶にも囚われているんだと。彼らの乗った船は瓶ごと大嵐の南太平洋に流され、その中で悪戦苦闘しているのです。では、瓶は何を意味しているのか。「瓶=鈴井さんが演じた機関士のビン」?

そういえばビンは外国人で片腕だったっけ…。

彼らが警察に捕まるきっかけとなったデモなのですが、のちに有害な産業廃棄物の話題が出てくるので脱原発デモと思いたくなるところです。しかし、わたしは舞台を観ているときから、あれは特定秘密保護法に反対する人々のデモを指しているのではないかと思っていました。特定秘密保護法はこの舞台の終演直後、2014年12月10日の施行です。特定秘密保護法とは実際にどのような法律で、一般の人にもどんな影響が及ぶことになるのか、またジャーナリストや表現者、放送局への締めつけはどうなるのか、よく理解できないまま法律が施行され、濡れ衣で逮捕されるかもしれないという、得体のしれない不安感や、閉塞感、不安定さを表したものがあの十数台のシーソーを使った舞台装置であり、冤罪を招いた夜のデモのシーンです。

舞台に出ている演者は俳優という「表現者」です。藤村忠寿さんは「北海道テレビ」というメディアの肩書を使い、職場であるテレビ局も1ヶ月の出張という扱いでこの公演に参加しました。これはディレクターという制作する側の人間と、マスメディアというテレビ局の、目前の特定秘密保護法に対する心意気や覚悟のようなものを感じました。

日本国憲法の第21条「表現の自由」にはこうあります。

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

本来であれば、法治国家という安全な瓶で守られているはずの「表現者が乗る船」が、特定秘密保護法という見えない法律にによって囚われ、どこに行きつくかわからない航海に出てしまった。日本は憲法で表現の自由が保障されている国なのに、特定秘密保護法によって表現の自由が制限されようとしている。日本国民を乗せた船から見えない瓶を割って自由になりたい。

この瓶は見えませんからそう簡単に割ることはできません。ラストシーンで、一夜明け嵐が過ぎ去った晴天の海上で、難破船のようになったマグロ漁船の乗組員たちは遠くに陸地を発見します。彼らは新天地に上陸できたのか。自由を手に入れることはできるのか。公演時は毎回演出を変えて観客にわかりやすく工夫されていたようですが、この舞台は現在進行形の事象をテーマにしているので、曖昧な終わり方のほうがむしろリアルな感じがします。

舞台「SHIP IN A BOTTLE」のもう一つの重大な秘密とは、特定秘密保護法をテーマにした演劇作品だったということです。わたしは、表現者ならデモや集会に参加して政治的なスピーチをしたりするよりも、自分の仕事の中で説得力のある表現ができる人を尊敬します。たとえ重いテーマであっても、どこで観客を笑わせるか、どこで泣いてもらって、どこで一息ついて、楽しんでもらって、感動とメッセージを届ける……、そんなことを白紙の状態から考えて実現できるのは、やはり鈴井貴之ってすごい! と思うのです。

それから、安倍内閣はこの特定秘密保護法を皮切りに、2016年3月には安保法制を施行し、今まさにテロ等準備罪、いわゆる共謀罪が国会を通過しようとしています。しかし、国民の熱量と言うか、反対の声は当時と比べて明らかにパワーダウンしています。これは一体どうしたことでしょう?

鈴井貴之さんはこの後、誰にでもわかりやすく、楽しめる舞台をお客様に観ていただきたいとの思いから、2016年2月に舞台「HAUNTED HOUSE」を発表しました。そして2017年7月にOOPARTSの新作公演が予定されています。

SIP IN A BOTTLEはDVDが販売されています。興味を持たれた方はぜひ!

【Loppi HMV CUEPRO 限定】OOPARTS vol.2 SHIP IN A BOTTLE -
【Loppi HMV CUEPRO 限定】OOPARTS vol.2 SHIP IN A BOTTLE –

※OOPARTS公式サイト
http://ooparts-hokkaido.net/

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