こんなでたらめな裁判で木嶋佳苗を死刑にするのか? これが『木嶋佳苗ㅤ法廷証言』を読んだ最初の感想でした。
2017年4月14日、木嶋佳苗に対し、最高裁判所はさいたま地裁の判決を支持し、上告を棄却、死刑判決が確定しました。木嶋は史上初の第一審・裁判員裁判による女性死刑囚となりました。
東京、千葉、埼玉で、交際していた男性3人を練炭自殺と見せかけて殺害した罪、7人の男性に対する詐欺・詐欺未遂・窃盗の罪に問われた裁判で一貫して無罪を主張していました。
『木嶋佳苗ㅤ法廷証言』(宝島SUGOI文庫、2013)は、2人の女性ライターの傍聴記録の体裁を取っていますが、目次からしてちょっとヒドイ。
第一部ㅤ首都圏連続不審死事件
ㅤ木嶋佳苗の「実像」を追って
第二部ㅤ100日裁判証言録
木嶋佳苗被告・法廷証言録1
ㅤ”名器自慢”も飛び出した前代未聞のSEX法廷
婚活詐欺の被害者5人の法廷証言
ㅤ毒婦の毒牙にかかりながら生還した男性たち
木嶋佳苗被告・法廷証言録2
ㅤドS検事の追求で次々と暴かれたLLサイズの嘘
木嶋佳苗被告・法廷証言録3
ㅤ性の奥義を極めたかった……
ㅤ傍聴席がのけぞった仰天発言
さいたま地裁一審判決の要旨
ㅤ「主文、被告人を死刑に処する」
木嶋佳苗 法廷証言 (宝島SUGOI文庫) –
普通に一般社会に生きてる女の人だって、同じ同性から見て、この人怖い、考え方についていけない、できれば関わりあいになりたくない、理解できない、そんな女性は掃いて捨てるほどいます。しかし、彼女達はそれぞれが自己完結できていて、自分はあくまで罪業や悪徳からは遠い存在だと思っているし、実際に犯罪に手を染めてしまうのは、ごく少数のはずです。
その一般女性が木嶋佳苗に対して抱くイメージは、わたしよりブスなのに、デブなのに、婚活サイトや出会い系で男を取っかえひっかえ、あげくに1億円以上も貢がせて、セレブ生活だなんて、何故なの!?
かもしれません。木嶋佳苗は言います。
「本当のわたしを誰もわかるはずがない」
確かにそうでしょう。
でも感情的なパフォーマンスで終わった司法の判断で、ひとりの人間を死刑にしてはいけないのです。最高裁判所の上告棄却により、真実は闇に葬られることになりました。
わたしは、仮に木嶋佳苗が殺人を犯していたとして、その理由がわかる気がします。木嶋佳苗には本命のSさんという男性がいました。彼と会うときはお金はいつも折半で、お互いのことをセフレと称していました。
殺された男性たちは、それぞれ木嶋の地雷を踏んだのでしょうが、木嶋にとって結婚の意思は本心だったと思います。ただ、共通しているのは、女に現金を貢げば、その女は自分から離れていかないだろう、札束を積んだだけの愛情を女が自分に与えるのは当然だ、という男の論理です。
これとぴったり対応するのが、性を金銭に変えることに全く抵抗を感じない木嶋のセクシャリティです。木嶋にしてみれば、間に「結婚」の文字さえあれば、1億円騙し取ろうが、気持ちは二の次、体は三の次で、罪悪感などないのです。では、なぜ殺してしまったのか。6ヶ月の間に3人の殺人を犯さなければならないほど、木嶋を追い詰めていたものは何なのか。裁判ではそこを明らかにしなければならないはずでした。
女なんて怖いものです。
奇しくも和歌山毒物入りカレー事件で、死刑が確定した林真須美は4月1日付で大阪高等裁判所に即時抗告しました。
法務大臣に早期執行の請願をして死刑を受け入れる木嶋佳苗と、高等裁判所に即時抗告して闘い続ける林真須美。いずれにしても、真実を知りうるのは彼女たちだけなのです。