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【映画】ヤクザと憲法【後編 】 元山口組顧問弁護士・山之内幸夫を社会的に抹殺した正義とは

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映画「ヤクザと憲法」にはもう一人の主人公として山之内幸夫氏が登場します。

山之内幸夫氏は弁護士として数々の刑事弁護を担当する中に、暴力団関係者の弁護が含まれていました。そして五代目山口組若頭宅見勝との出会いにより、正式に山口組の顧問弁護士に就任しました。

しかし「暴力団の顧問は弁護士の品位を害する」と、大阪弁護士会から懲戒処分を受けます。1991年には、恐喝罪で逮捕されますが、1997年大阪高等裁判所で無罪が確定。2013年には建造物損壊教唆罪で2014年4月に在宅起訴。2015年に最高裁で執行猶予つきの有罪判決が確定し、この判決により弁護士資格を失いました。

映画「ヤクザと憲法」の中では、判決の当日に裁判所へ向う山之内さんをカメラが追います。

わたしは山口組の弁護士と聞いて、遠藤誠弁護士を思い出していました。あの帝銀事件の平沢貞通の弁護人として知られ、永山則夫の国選弁護人でもあった、伝説の弁護士です。

遠藤誠弁護士は、暴力団対策法は違憲であるとする行政訴訟において山口組の代理人を務めました。山口組は主任弁護費用として12億円の支払いを申し出ますが、これを断って無償で弁護したというのは有名です。このときには遠藤誠弁護士の左右弁別せざる人脈からか、野村秋介氏らと一水会から「統一戦線義勇軍」、暴力団関係者による「任侠市民連合」、新左翼・日本共産党が合同で抗議のデモ行進や座り込みなど激しい反対運動をしたようです。

日本国憲法第21条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

遠藤誠弁護士は、暴力団対策法はこの第21条1項の結社の自由を不当に制限し違憲であると主張しました。

各地で違憲訴訟が起こされましたが、福岡地裁で合憲判決が下りました。

もし、清勇会の川口和秀会長が言うとおり、暴力団排除条例は憲法第14条に違反していると訴訟を起こしたらどうなるのでしょう。

残念ながら今のヤクザには裁判費用が大きな負担になることは間違いないでしょうし、山之内氏が弁護士資格を失った今、暴力団の弁護を引き受ける弁護士もいないでしょう。

山之内氏が恐喝罪で逮捕されたときには、150人もの弁護団がつき、晴れて無罪を勝ち取ったものの、弁護士としての依頼は激減し、事務所も縮小せざるを得なくなります。それでも暴力団員の弁護を続ける山之内氏から、弁護士資格を剥奪するまで権力を行使し続けた司法の正義とは、一体誰のためにあるのかと思うのです。

暴力団員と関わる人間は人権を侵害され、みせしめのように社会から抹殺される。

じゃあ、暴力団なんかと関わらなければいいじゃないか。

暴力団は悪。警察は善。
法律は正義。

しかし、刑法の斜め上を行く「テロ等準備罪」によって、ある日突然あなたの身近な人が「組織的犯罪集団」に入れられてしまうかもしれません。そもそも「組織的犯罪集団」とはどういう定義がされるのか、法務大臣だってまともに答えられないブラックボックスのような法律が成立しました。

さて、現在の山之内幸夫氏ですが、家族と離れて団地でひとり暮らしをしながら、作家活動に専念されているようです。映画化された『悲しきヒットマン』を始めとして多数の著作があります。新刊は『山口組 顧問弁護士』(2016、角川新書)。
山口組 顧問弁護士 (角川新書) -
山口組 顧問弁護士 (角川新書) –

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